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国際重量挙げ連盟の不正疑惑:ドーピング隠蔽と金銭授受

先日ウエイトリフティング界で大ニュースが報道されました。1月5日にドイツの公共放送ARDが国際重量挙げ(IWF)の不正疑惑をテーマにしたドキュメンタリーを放映しました。日本のニュースでも取り上げられ、現在日本のウエイトリフティング関係者の間でも大きな話題となっています。

ヤフーニュース↓

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200106-00000013-jij_afp-spo

ARDはドイツの報道ステーションです。今回のドキュメンタリーを制作したのは2015年にロシアの国家ぐるみのドーピング隠蔽工作について調査したハイオ・ゼッペルト(Hajo Seppelt)氏をはじめとする記者陣になります。

もちろん私はドイツ語がしゃべるわけではないのでネット上に出回っている英語の記事とGoogle翻訳から得られる情報を元にこの記事を書いています。英語の記事を実際に読みたい方々は下記のリンクを参照してください。私が書いたこの記事は主にAll Things Gymのグレゴアー・ウィンターが書いた記事を基に翻訳されています。グレゴアーはドイツ人である上、英語もネイティヴレベルで話せます。彼の翻訳はかなり正確なものでしょう。

https://www.insidethegames.biz/articles/1088760/ard-programme-targets-weightlifting

https://www.sportbusiness.com/news/ioc-expresses-concern-iwf-hits-back-as-ard-documentary-fallout-continues


リフターの主君(Herr der Heber)
ドイツの取材陣がIWFとドーピングを調査

主な不正疑惑

  • 腐敗
  • 隠し銀行口座
  • 尿サンプルの操作
  • 縁者びいき
  • 詐欺
  • 子供のドーピング

国際オリンピック委員会(IOC)はドキュメンタリーで使用された文書等の存在を知っていたのにも関わらず見て見ぬふりをしていた。


  • ウエイトリフティングでは2000年以降700件のドーピングスキャンダルがあった。(公開された分)
  • 2018年までの過去10年分の尿や血液サンプルが何ヵ月にも渡って解析された。(サンプルの数は16000)
  • 2008~2017の間に540個のメダルが受賞されるが、メダル受賞者のほぼ50%がドーピング検査を受けていなかった。
  • メダルを受賞したロシア人の2/3が検査されていなかった。
  • IWFはトレーニング期間中のドーピングには目をつぶっていた。

バトゥミで行われた2019ヨーロッパ選手権

  • ARDはドーピング検査官と連絡を取る
  • 彼らの資料によるとラシャ・タラハーゼはリオ五輪前と2015世界選手権の前のトレーニング中に検査を受けなかった。
  • タラハーゼは2013年にドーピングのため2年間出場禁止になったが、禁止期間中に検査を受けることはなかった。

ジョージアの関係者等はこれらの内容は正確ではないと主張。

ARDはハンガリー反ドーピング(HUNADO)検査官の取材を試みたがカメラの前で話すことを拒んだ。


ブダペスト

  • IWFは基本的にHUNADOを採用している
  • ドーピング検査の77%はHUNADOが実施している
  • 世界選手権でもHUNADOが採用されることがほとんど
  • ただ、ヒューストンで行われた2015年世界選手権にては米国反ドーピング(USADA)が採用された
  • USADAの会長であるトラビス・タイガート(Travis Tygart)によるとIWF側から抵抗があったとのこと
  • IWFはドーピング検査を「経験のあるHUNADO検査官」に任せたいと主張した
  • USADAが選手たちのホテル部屋を確認したところ、注射器が幾つも発見された
  • ヒューストンでは24件のドーピング違反が発覚した

シュヴァルツヴァルト、ドイツ

  • ARDはドイツの元代表コーチであるオリバー・カルソ(Oliver Caruso)を取材した。カルソは1996年五輪の銅メダリストでもある。
  • カルソはとあるモルドバ人との会話内容を教えてくれた。
  • ドイツでドーピング検査を偽装することは不可能だが、モルドバでは60USドル(6,500円相当)で国内検査を偽装することができるとのこと。200USドルを支払えば国際試合での偽装も可能だと述べた。
  • カルソが話した人物はモルドバチーム専属の医師であるドリン・バルムス(Dorin Balmus)だとARDの調査で判明した。

モルドバ

  • ARDは正体を伏せてドリンと対談した
  • ARDは西ヨーロッパから来た重量挙げ選手の専属マネージャーのふりをする
  • ドリンは「我々はハンガリーの検査官に検査された」と述べる
  • ドリンによると:検査官が来た時には選手たちのそっくりさんを準備する→そっくりさんのクリーンな尿と引き換えにお金を支払う→検査官達にはパスポートを細かく確認しないようにお願いしてお金を渡す

ケルン、ドイツ

  • ウエイトリフティングのサンプルのほとんどはケルンにて解析される。
  • ARDはWADA認定の施設でサンプル解析を行っているハンス・ガイヤー(Hans Geyer)を取材する。
  • HUNADOは2015年世界選手権前のサンプルを検査していた。結果はクリーンだった。
  • しかしUSADAが同じ選手達に対して検査を行ったところ、結果は陽性だった。かなり前からドーピングしていたことが解析結果から判明した。
  • なぜHUNADOの検査結果からは同じ結果が得られなかったのだろうか。
  • ガイヤー氏によると、サンプルの操作があったとのこと。パスポートやDNA解析結果を確認して尿サンプルが偽装されていることがわかった。
  • ARDがHUNADO及びモルドバの関係者等に確認を取ったところ、知らないと回答された。

パタヤ、タイ

  • ARDはラティカン・グーンノイ(Rattikan Gulnoi)を取材する。グーンノイは2012年のオリンピック銅メダリストであり、ドーピングで引っかかったことはない。今はジムで働いている。
  • ARDは隠しカメラで会話の内容を録画した。彼らはヨーロッパ選手達のマネージャーのふりをし、選手たちのためにトレーニングキャンプを設ける予定であると伝える。そのためのドーピングプランと医師が必要だと言う。
  • グーンノイによると:トレーニングプランは立案できる→ドーピングに合わせてトレーニングを調整すれば問題ない→タイの薬物はよくないからほとんど海外から輸入している

更に細かい会話内容が録画されている↓

グーンノイ:「私たちは24時間後には探知されないものを使用している。他にはもっと効果が強いものがあるけど、3日間は探知可能になってしまう。」

記者:「副作用は?」

グーンノイ:「低い声、増毛。私が使った時は男みたいな顎になり、髭も生えた。権力のある人たちは選手たちの健康なんて気にしていない。アスリートはメダルを持ち帰るべきである。ユースであっても。」

記者:「最年少でドーピングを始めるのはいつ?」

グーンノイ:「13歳の時」

記者:「あなたはいつ始めた?」

グーンノイ「18歳。2011年に自分の身体が(トレーニングに)ついてこれるように」

記者:「2012で何を使用した?」

グーンノイ:「アナボリックス」(アナボリックステロイドのこと)

記者:「2012年には検査をパスすることが可能だったのか」

グーンノイ:「二度ほど。今のところタイ人で捕まらなかった選手は私だけだと思う。」

記者:「どのようにすれば確実に捕まらないのだろうか。」

グーンノイ:「早めに摂取を止めれば問題ない。ボスとコーチが入念に計画していた。注入、休止、注入、休止


ドイツ

  • ARDはユルゲン・シュピース(Jürgen Spieß)を取材する。
  • 「ドーパーに勝つのはほぼ不可能だ」
  • 公の場で堂々と薬物使用について話す他の選手たちに対していつもびっくりするとのこと。
  • 「自分は他の選手たちと競技しているわけではない。自分は各国のシステムと競技している。」

ウエイトリフティングとオリンピック

  • IOCからのプレッシャーに負け、IWFはドーピング検査の責任を引き渡した。
  • IOCと親しい団体が引き継ぐことになったが、またしてもHUNADOと契約することになった。
  • IWFはドーピングを通して何百万ドルも儲かっている。
  • ドーピング違反がある度に各国の委員会は選手ごとに5,000ドル(5万5千円相当)の罰金を支払っている。国によっては20万ドルから50万ドルまでの罰金が求められる。罰金は現金で支払われる場合もあった。
  • ウクライナ重量挙げ会長からの手紙には「アヤン氏(IWF会長)の希望通り、現金で払った」と記載されていた。
  • アゼルバイジャンを含む国々は2013の時点で罰金が未払いの状態だった。アゼルバイジャンは2013年のドーピング違反によって50万ドル支払う必要があったが、なぜか支払いリストには載っていなかった。
  • なぜ載っていなかったのか?→もしかしたら記載漏れ?現金払い?

アヤン会長はIWFから年間27万ユーロ(3000万円相当)もらっている。


ドイツ

  • ドイツ重量挙げ連盟(BVDG)のクリスティアン・バウムガルトナー(Christian Baumgartner)は「アヤン氏は数十年をかけて確立したドーピングシステムの象徴である」と述べる。
  • 2013年にバウムガルトナーはIWF執行役員会に選出されたが、次の選挙では選ばれなかった。
  • アヤン氏に反対する者はIWFで生き残れない
  • バウムガルトナー:「腐敗の文化が出来上がった。」「ドーピング違反を隠蔽するためには腐敗したシステムが必要になる。」

ローマ

ここからは隠し銀行口座について

  • ARDはヨーロッパ重量挙げ連盟の会長であるアントニオ・ウルソ(Antonio Urso)を取材する。
  • ウルソ氏はIOCからの支払額を示す文書を見せる。そこにはIWFの今ままでのIOCからの受取額が記載されている。
  • 二つのスイスのIMF口座に1992年から17年間かけて2千3百万ドルが振り込まれていた。しかしこれらの額はIWF側では記録されていなかった。これ等の口座が発覚したのは2009年である。当時署名する権限を持っていたのはアヤン氏のみ。ARDの調査によると最低でも550万ドルの行方をアヤン氏は説明できなかった。
  • ウルソ:「口座について誰も知らされていないのは興味深い」(もちろん皮肉のつもり)

ARDはとある録音ファイルを手に入れることを成功した。それには執行役員会のメンバーととある会計事務所の会話の内容が録音されていた。この会話は2009年ブダペストでの出来事である。

  • アヤン:「大事になってしまうと重量挙げにとって危険な状況になってしまう。」「最も大事なのは団結と平和である。」
  • アヤン氏によるとスイス口座のお金は予備であるとのこと。会計事務所側はなぜIOCから貰う数百万ドルのお金が秘密であるか聞く。
  • アヤン氏は答えないが、他の執行役員も特に質問はしない。
  • バウムガルトナー氏の予想では550万ドル程度ではないと述べる。利率も考慮して恐らく7~8百万ドル相当の行方が分からない状態であるとのこと。
  • ウルソ氏は過去にIOCにお金の紛失について連絡をしたことがある。
  • IOCは「それは内部の事情である」と回答した。IOCは責任を問われたくない。

なぜ法的措置が取られないのか

バウムガルトナーは「スポーツ界では同業者に対して法的措置をとる行為は悪く見える」と皮肉に言った。


バーゼル、スイス

  • ARDは汚職・腐敗の専門家であるマーク・ピース(Mark Pieth)と話す。彼はFIFAの汚職改善にも関わったことがある。
  • ピース氏と彼のチームはIWFの文書を調査した。
  • 「私が見る限りこれはとてもとても大胆な行動だ。FIFAで見てきたものより遥かに大胆である。」
  • 数週間にわたる調査の結果、ARDの疑惑は確信に変わった。
  • これ等の証拠があればスイスの当局も調査のために動くはずだ。

以上がドキュメンタリーの概要になります。ドキュメンタリーの映像はドイツ語のみで放映されており、オンラインでもドイツ以外の国で視聴することができないみたいです。


IWFの反応

ドイツのドキュメンタリーが放映された次の日にIWFは既に「根拠のない告発や曲解された情報が含まれている」と報道内容を否定する声明を出しています。

https://www.iwf.net/2020/01/06/iwf-rejects-ard-allegations/

声明文の最後にタイの組織的ドーピングに取り組む方針について書かれています。個人的な意見にはなるのですが、IWFが注意をそっちに逸らそうとしているようにしか見えません…


IOCの反応

もちろんIOCはARDの報道を快く思っていないです。詳しくは下記の日本語の記事を参照してください。

https://www.afpbb.com/articles/-/3262392

上記記事には「IOCとして明確にしておきたいのは、ARDの主張とは違い、映像が疑惑の根拠としている書類の大半について、当連盟は所持していないということだ。これに該当するのは、ドーピングの検査状況や不正会計の疑惑に関連した書類である」 と書いてありますが…

あたりまえだろ!!!

そもそも所持していたところで「はい、そうです。実は全部知ってました」なんて言うわけがないですね。

IOCがどのように対処するかによってウエイトリフティングの未来が決まる可能性があります。

これを機にIOCはウエイトリフティングをオリンピック競技から外すかも知れない。

おまけ回:最近のニュースと雑談 ~ワールドカップ、カタールカップ、これからのWe Lift Weights

皆さん明けましておめでとうございます!
今回のポッドキャストはおまけ回になります。
内容は以下の通りです

・最近のニュース
・ワールドカップ:タオ選手とシャオジュン選手
・カタールカップ:ロスタミVSメソハソナ
・ロシアはオリンピック出れない
・今後のWe Lift Weights

と言いましても主に雑談が多いエピソードになりました。今回はスペシャルゲストもいなかったし、カジュアルに典大くんとおしゃべりしている感じです。しかも過去最長のエピソードです!(笑)
通勤/通学で暇な時や寝れない時にでも聴いてください!

今年のアジア大会で激しいバトルが見れるでしょう

もしこのポッドキャストいいね!と思いましたらツイッターやインスタグラム等で共有よろしくお願いします!We Lift Weights重量挙げポッドキャストはSpotify、iTunes、YouTube等で聞くことができます。もしよければフォローしてください!よろしくお願いします!

第4回目:ROAD TO TOKYO  ~東京2020オリンピック選考過程 完全攻略ガイド

第4回目ポッドキャストの内容は…

東京2020の選考プロセスの説明です!

選考基準に関する公式の文書はあまりにも難しくなっているので、このポッドキャストでできる限りわかりやすく説明してみました!相変わらず1時間以上という長いエピソードになってしまったのですが、今回はほとんど雑談なし!(笑)

59㎏級の安藤美紀子選手、2019年世界選手権にて

選考に関するルールが細かすぎて説明がどうしても1時間以内は無理でした…

このエピソードの内容ですが記事としても書きました。もし「読む方が楽!」という方はこちらの記事を確認してください!

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ROAD TO 東京2020 ウエイトリフティング選考 完全攻略ガイド 

この記事ではオリンピック選考の過程について可能な限りわかりやすく説明しようと思います!国際ウェイトリフティング連盟(IWF)の公式説明文ですとあまりにも分かりにくいので未だに理解が出来ていない人たちがほとんどだと思います。

え!?今までの選考方法と違うの?

そうなんです…全然違うんです!!

今回の選考に関しては細かいルールがたくさんあります!長くなってしまうので早速選考プロセスの詳細を見ていきましょう!

1. 選考期間のスケジュール

選考は2018年11月から開始されます。ちょうど2018年世界選手権の直前ですね。選考期間は18ヵ月間になっていて、3シーズンに分かれています。

第1シーズン:  2018年11月1日〜2019年4月30日
第2シーズン: 2019年5月1日〜2019年10月31日
第3シーズン: 2019年11月1日〜2019年4月30日

オリンピックに出場するためには18ヵ月の選考期間の間、選手達は最低でも6試合に参加(検量のみを含む)する必要があります。また、各シーズン毎に最低1試合に参加が必須となります。つまり最低でも6ヵ月に一回は試合にでる必要があります。

これは全てのアスリートを常に試合に参加させるためです。試合に参加する機会が増えれば増えるほどドーピング検査を受ける頻度が上がります。結果的に、ドーピングした選手は処罰されやすくなります。

よし!じゃあ試合に参加しまくればいいんだな!

ただし、参加する試合はIWF公認の試合である必要があります。国体や全日本選手権など、IWF非公認の試合にどれだけ参加してもオリンピック選考にはカウントされませんので要注意です!

更に、IWFに認められている試合は3つにランク付けされていて、これらの試合に参加する必要があります。 
ランクはゴールド、シルバー、ブロンズの3つになります。

ゴールドイベントは最も競争率が高いイベントになります。
例:世界選手権、アジア選手権、ヨーロッパ選手権などの大陸選手権

シルバーイベントはそれなりに規模が大きい国際イベントになります。
例: IWFワールドカップ、日韓中フレンドシップ大会

ブロンズイベントは小規模の国際イベントや地域毎のイベント等が含まれます。※ブロンズの試合では世界記録が認められていません。

東京2020に出るには18ヵ月の選考期間中に最低でも一つのゴールドイベントともう一つ追加でゴールドもしくはシルバーイベントに参加する必要があります。

2. 階級の選択

ウエイトリフティングでは選手の体重によって階級が異なります。IWFより定められている階級は10個になります。

男性の階級は:
55kg, 61kg, 67kg, 73kg, 81kg, 89kg, 96kg, 102kg, 109kg, +109kg
女性の階級は:
45kg, 49kg, 55kg, 59kg, 64kg, 71kg, 76kg, 81kg, 87kg, +87kg

ただ、オリンピックでは20個の階級全てが出れるわけではないんです!オリンピックで参加可能な枠は下記のとおりです;

男性の場合:
61kg, 67kg, 73kg, 81kg, 96kg, 109kg, +109kg 
(55kg、89kg、102kg級が抜けています)
女性の場合:
49kg, 55kg, 59kg, 64kg, 76kg, 87kg, +87kg
(45kg、71kg、81kg級が抜けています)

オリンピックの方が階級少ないの??どうして?もったいない!

そうなんです!非常に残念なのですが、ドーピング問題で枠を減らされてしまいました.…
国際オリンピック委員会(IOC)の観点からすると、他の人気スポーツの枠の方を増やしたいんですよね(野球とかバスケとか) 。その方がお金にもなりますし、そもそも新たにスポーツをたくさん追加し始めた主な理由はそれです。でもこの話を続けてしまうと長文になってしまうのでまた別の記事で!(笑)

先程説明した通り、オリンピックでは男性と女性合わせて14つの階級が認められています。そして各階級ごとに参加が認められているのは最大で14人になります。各国から階級毎に一名のみ選手を選抜することが可能です。(中国人ばかりメダルを獲得することはもうない)国ごとに最大8人(男性4人、女性4人)の選手の参加が認められています。

ちょっと待てよ…じゃあ非オリンピック階級で試合に出てる選手たちはオリンピック出れないのかよ!

心配無用!実は…出れるんです!
選考期間中に非オリンピック階級にて試技することは認められています。ただし、選考の18カ月期間中に最低2回はオリンピック階級で試合にでなければなりません。

例として:89kgの山本選手がオリンピックに96㎏級として出たい場合この18ヵ月期間中に最低でも2回96㎏として参加すればいいんです!彼は既に2018年IWFワールドカップにて96kgとして試合に出ています。また、この間の東京2020テストイベントにて96kgとして検量しています。彼はこの条件を既にクリアしていますね。

やった!東京2020で俊樹パイセン見れるかも知れないんだね! 

3. アンチドーピング規則違反による枠の削減

ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャン等、とっても特別なサプリ(笑)を使いすぎた国々は枠が減らされます。当たり前ではあるんですが、アンチドーピング規則違反が多い国はオリンピックに参加できる選手の数が減ります。まぁ、妥当な制裁ですね…

北京オリンピックから東京2020の間の期間中に違反が多いと枠数に悪影響が出ます。 例として、上記期間中ににアンチドーピング規則違反が10~19回あった国は4枠(男子2人、女子2人) しかないです。規則違反が20回以上ある国はさらに枠を減らされ、合計2人(男子1人、女子1人)しか送れないです。

日本みたいなドーピングと無縁の国は心配無用ですね!

4. ポイントを稼ごう!

皆さん大丈夫でしょうか?付いてこれてます?説明している僕の方も頭がパンクしそうです。

新しい選考プロセスが難しすぎて泣きそうになるジン選手

いいですか皆さん….

ここからが最も重要です!!

単純にドーピングに引っかかってなければオリンピックに出場できる! なんてことはないんです。世界レベルにて結果を残さないと出場は非常に難しくなります。全ての選手達はポイントを稼いで世界ランキングの上位に入ることを目指さなければなりません。
開催国枠が与えられる日本は例外なのですが(これは後程触れていきます)、基本的に選手たちのパフォーマンス次第でオリンピック出場が決まります。

今回の選考過程で初めて導入されたシステムが…

ロビポイント(Robi points)になります。

ん?ロビ?なにそれ?おいしいの?

…まぁそうなりますよね。ロビポイントはIWF所属の科学者さんであるロバート・ナギー(Robert Nagy)博士が発明したシステムです。ちなみにですが、ロバート博士のあだ名がロビーだからロビポイントらしいです。(しょ…しょうもねぇ…)

簡単に言いますと世界記録に基づいて階級間の選手たちを比較するシステムです。世界記録=1000ポイントを基準に計算されます。ちょうど世界記録と同じトータルを出せば、1000 ロビポイントがもらえます。ちなみに、挙げる重量が重ければ重いほどロビポイントがもらえます。

ロビポイントのグラフ。X軸:世界記録の% Y軸:ロビポイント

例えば、世界記録のちょうど半分を挙げると100ポイントしかもらえないですが、世界記録の80%を挙げればなんと400ポイント以上もらえます。

つまり挙げる重量が重ければ重いほどオトク!

階級ごとの世界記録を基準としているので、別の階級で更に重い重量を挙げたからと言ってさらにポイントがもらえるわけではありません。例えば、Aさんが89㎏として世界記録をとっても、Bさんが81㎏として世界記録をとっても、二人とも同じく1000ポイントもらいます。

このロビポイントの点数を基に、すべての選手たちの世界ランキングが決まります!

あと、ロビポイントは出た試合のランクに大きく影響されます。なぜなら、出るイベントによってもらうポイントに補正がかかるからです!イベントのランクによって補正の倍率が異なります。

ゴールドイベント:取得したロビポイントの1.1倍

シルバーイベント:取得したロビポイントの1.05倍

ブロンズイベント:倍率なし(1.00倍)

つまり、ゴールドイベントとブロンズイベントで全く同じトータルを挙げてももらえるロビポイントが全然違うんです!例えば、世界記録と同じ重量を挙げてもその試合がゴールドイベントでは1100ポイント(1000 X 1.10)もらえますし、ブロンズイベントでしたら1000ポイントしかもらえないです!

ということは…

ゴールドイベントやシルバーイベントにできる限りたくさん出場した方がロビ得!!

最終的なな選手たちの格付けが決まるのは選考期間が終わった後 (2020年6月) になります。ランキングは下記4つのスコアから決まります。

スコア1:第1シーズン中の最高ロビポイント
スコア2:第2シーズン中の最高ロビポイント
スコア3:第3シーズン中の最高ロビポイント
スコア4:選考期間中の上記3つの次に高いロビポイント

皆さんお気づきでしょうか。18ヵ月の選考期間中に6回試合に出場することが求められているのに、必要とされるスコアは4つのみになります!つまり、6試合中2試合はカウントされません!皆さん2回程度はしくじってもOKってことですね!(笑)

現在のランキングはIWFのこちらのリンク先から確認できます
https://www.iwf.net/qualif/menu

10月23日の時点での暫定ランキング。1位はもちろん、ジョージアのラーシャ

※こちらは暫定的なランキングであり、最終ランキングではありません。

にしても…ラーシャの合計ポイント高すぎぃ!

手持ちのロビポイントが多すぎて大喜びするラーシャ選手

ラーシャ選手(Lasha Talakhadze)は第1シーズン中に1278.70008点(2018年世界選手権)を獲得しています。

現時点でのラーシャ選手のポイント。上の二つのスコアは第1シーズンから(2019年ヨーロッパ選手権及び2018年世界選手権のスコア)。下の一つは第2シーズンから(2019年世界選手権のスコア)。

なぜこのような高得点になったのか実際に計算して確認してみましょう!

選考期間が始まった時、世界記録の基準はワールドスタンダードの453kgでした。(ワールドスタンドとは:2018年の階級更新に伴い予め設定された記録のことです。ワールドスタンダード以上の重量を挙げない限り新世界記録は達成されません。)ラーシャはそれを遥かに上回り、トータルで474kgを挙げました。
ロビポイントの数式にこの数字を補正無しで入れると…1162.4546点と出ます!世界記録以上のトータルを挙げたので、1000ポイント以上取得してますね。しかし、世界選手権はゴールドランクの試合ですので、これをさらに1.1倍で掛け算します。そうすると1278点と出ます。

※ちなみにですが、 IWFのサイトにロビ計算機があります→ https://www.iwf.net/weightlifting_/robi-sinclair-new-bw/

お分かりいただけましたでしょうか…ラーシャは最強なのです!
….あ、今その話してないか(笑)

え…でもロビポイントって世界記録を基準にするんでしょ?
世界記録が更新されたあとはどうなるの!?

USAウエイトリフティングのCEO、フィル・アンドリュースによると…本来の予定では、各シーズン毎にロビポイントの基点となる世界記録を更新する予定だったらしいです。
例えば、第1シーズン中にA選手が81㎏級で400kgの新しい世界記録を出したとします。これによって第2シーズンの始まり(2019年5月1日)にロビポイントの基点が400kgに更新されます。第2シーズン中にどんなに世界記録が更新されてもこの6か月間の間(2019年5月1日~10月31日)はロビポイントの基点は400kgのままになります。つまり、他の選手が第2シーズン中に402kgを挙げようが403kgを挙げようが、81kg級のロビポイントは400kg世界記録を基に計算されます。第2シーズン中にA選手がまた世界記録を更新し、新世界記録が401kgと設定されたとします。この場合、第3シーズン中のロビポイントの基点はこの401kgに変更されます

しかし!またしてもドーピングのせいで問題発生!

2018年世界選手権以降、世界記録を更新している選手たちが次々とドーピングで引っかかってしまいました!ドーピングしていた選手たちの記録を基に他の選手たちのポイントやランキングを計算するのは不公平です!不公平極まりない!

…ですのでとりあえず今のところ全てのポイントの計算は第1シーズンの開始時に設定されたワールドスタンダードを基に計算されているみたいです。

ランキングの話に戻りますが、ロビポイントによって各選手は格付けされます。ではランキングが具体的にどのようにオリンピック出場資格と関係してくるのか見ていきましょう。

オリンピック出場条件は以下の通りです:

1. 世界ランキング上位8位以内に入ること

2. 各大陸ランキングにて世界上位8名の次にランキングが高いこと
※大陸は全てで5つ:アフリカ、アメリカ州(北米、南米)、アジア、ヨーロッパ、オセアニア

3. それ以外に、特権として開催国枠及び3者委員会招待(Tripartite Commission Invitation)というものが存在しますが、こちらは後程触れていきます。

つまりオリンピック出場チームは階級ごとに
8名(世界上位8位)+5名(各大陸から1名ずつ)+1名(特権枠)で合計14名になります。

えっ、じゃあ世界的に上位8位入っていなくてもオリンピックに出れちゃうってこと?

そうなんです。例えば、アメリカ合衆国のウェス・キッツ選手は最終的に世界ランキング上位8位に入らなくてもオリンピックに出場する可能性が高いです。なぜなら、彼はパンアメリカン選手権(アメリカ州の大陸選手権)にて優勝してます。つまり、彼は現時点でアメリカ州で最もランキングが高い選手となります。

しかし!!!

これはとっても簡単な例です…もっと複雑な例を見ていきましょう!では109kg級の世界ランキングを見ていきましょう。現在109kg級の世界上位8名はこの通りです:

順位名前国籍最高
トータル
ランキング
ポイント
1MARTIROSYAN SimonARM4353,467.4401
2YANG ZheCHN4203,164.2194
3ARAMNAU AndreiBLR4262,981.6519
4DJURAEV AkbarUZB4172,957.1230
5BOCHKOV RodionRUS4142,906.4741
6CHUMAK DmytroUKR3802,805.1700
7HASHEMI AliIRI4052,778.3093
8MICHALSKI ArkadiuszPOL4032,697.6491

ですが、最初の方に説明しましたルールを思い出してみてください!各国最大男子を4名しか送れないのです。中国は金メダル獲得の確率が最も高い軽量級の男子を4名(61kg, 67kg, 73kg, 81kg,)を送ります。つまり2位のYANG選手はオリンピックに出場しない可能性が非常に高いです。また、5位のBOCHKOV選手ですが、ロシアはこの間の新たなドーピングスキャンダルのせいでオリンピック出場の可能性がほぼ0になりました。ではこの二人を除外し、改めて世界上位8位を見てみましょう。

順位名前国籍最高
トータル
ランキング
ポイント
1MARTIROSYAN SimonARM4353,467.4401
2ARAMNAU AndreiBLR4262,981.6519
3DJURAEV AkbarUZB4172,957.1230
4CHUMAK DmytroUKR3802,805.1700
5HASHEMI AliIRI4052,778.3093
6MICHALSKI ArkadiuszPOL4032,697.6491
7PLESNIEKS ArtursLAT4052,693.6002
8KITTS Wesley BrianUSA3992,551.4050

ランキングが変わりましたね…実際に各国がどの選手を送るかはわからないです。また、いつ誰がドーピングスキャンダル起こすかわからないです。つまり、このランキングは第3シーズン中に大きく変わる可能性がなくはないです。ただ、今のところ上記の選手たちが109㎏階級の世界上位8人として選ばれる可能性が一番高いです。

では、アジア大陸の枠は誰が掴むのでしょうか?109㎏級のアジア大陸のランキングを見ていきましょう。

順位名前国籍最高
トータル
ランキング
ポイント
1YANG ZheCHN4203,164.2194
2DJURAEV AkbarUZB4172,957.1230
3HASHEMI AliIRI4052,778.3093
4JEONG KisamKOR3962,529.1483
5SEO HuiyeopKOR3952,464.1934
6JIN YunseongKOR3602,427.7657
7BERSANOV IbragimKAZ3902,416.9056
8MOCHIDA RyunosukeJPN3932,318.8055

これが今のところのアジア大陸ランキング上位8名です。この中で、世界上位8位に入れなかった最もランキングが高い人が1名だけ選ばれます。ですので、既に世界上位8位に含まれている選手は除外しましょう。

順位名前国籍最高
トータル
ランキング
ポイント
1JEONG KisamKOR3962,529.1483
2SEO HuiyeopKOR3952,464.1934
3JIN YunseongKOR3602,427.7657
4BERSANOV IbragimKAZ3902,416.9056
5MOCHIDA RyunosukeJPN3932,318.8055
6SHIRAISHI HiroakiJPN3852,234.0092

そうすると韓国のJeong Kisam(ジョン キサム)選手が一位になります。つまり今のところアジア大陸枠で東京2020に出れる可能性が一番高いのはジョン選手になるということです。ただ、これは暫定的なランキングです。最終的にどうなるかはわかりません。御覧の通り、全ての選手が数十点~数百点差ですので第3シーズン中にこの順位は大きく変わる可能性が高いです。

5. 開催国としての特権・その他の例外

東京2020の選考プロセスを一通り説明したのですが、実は例外がいくつかあります!

開催国である日本は必ず女性3枠と男性3枠が保証されています!

もちろん出場できるのは階級ごとに一名のみです。もし日本人選手 がこれまでに説明した通常の選考方法で誰も選ばれなかったとしても、6枠(男子3枠、女子3枠)は保証されています。通常の選考方法で誰も選ばなれなかった場合、日本が6名を選抜してオリンピックに出場させることになります。通常の選考方法で出場資格を得た選手が女子・男子両方にて4人以上いる場合、日本は最大で合計8名の選手をオリンピックに出場させることが可能です。

つまり、日本人が合計8名出場したかったら結局のところロビポイントを頑張って稼がないといけないんです!

※開催国枠を使用するとしても、選手たちは最低でも各シーズンごとに1試合に出場する必要があります。つまり合計3つの試合に出る必要があります。また、その3つの内1つはゴールドもしくはシルバーイベントである必要があります。

出場資格を得ている選手を4名以上抱えている国はどうするの?

例えばですが、中国はオリンピック出場可能な選手を確実に4名以上確保しています。この場合、国自体が出場する選手を選ぶことができます。

主催国の特権枠以外にも例外があります。
三者委員会招待というものが存在します。(Tripartite Commission Invitation)
こちらの例外はかなりルールが複雑ですのであまり細かく触れないでおきます。

簡単に言いますと、この委員会は国際オリンピック委員会、各国内オリンピック委員会、そして各スポーツ連盟(ウエイトリフティングの場合IWF)の3者によって構成されています。三者委員会招待券は最大で8枠(女子4枠、男子4枠)付与されます。これは国ごとに与えられるのではなく、選手ごとに与えられます。また、この招待券の目的としては、普段オリンピックにて活躍することが少ない国々に輝くチャンスを与えることです。ですので、恐らく世界ランキングの低い選手が選ばれる可能性が高いです。

注意点ですが、三者委員会招待の枠を利用するとしても、その選手は18か月の選考期間中に最低でも2つの試合に参加し、そのうち1つはゴールドもしくはシルバーランクのイベントでなければなりません。

以上になります!

かなり複雑ですが、皆さんご理解できましたでしょうか。全部覚えることは難しいですが、上記の細かいルールを全て知っておくと東京2020までの試合がさらに楽しめると思います!重量挙げファンの皆さんだけではなく、アスリートやコーチの皆さんの役に少しは立てたかなと思います。

複雑なオリンピック選考プロセスがやっと理解できて喜ぶ持田選手!

このオリンピック選考についてポッドキャストも収録しているので是非そちらも聴いてみてください!聴いた方が楽な方にはポッドキャストをおススメします。

そして日本代表チームの皆さん!!
ロビ稼ぎ頑張ってください!!!

第3回目:2019年世界選手権振り返り ~男子編:日本代表チーム絶好調、ロスタミの怒り、世界一デカいトータル

山本選手 2019年世界選手権トレーニングホールにて

さっそくですが、第3回目のポッドキャストを収録しました!今回は男子編になります!またしても典大君と盛り上がってしまい1時間以上しゃべってしまいました…

今回は試合の結果だけではなく、試合の裏でどういうことが行われていたのか、各アスリートにどのようなコンディションで試合に挑んでいたか等も触れています。

本エピソードのハイライトとしては:
・日本チームの男子が絶好調すぎる!
・山本選手の208㎏ クリーンアンドジャークの金メダル!
・イランのロスタミ選手の怒り
・ラーシャ、またしても世界一のトータルを更新する

We Lift Weights重量挙げポッドキャストは、SpotifyとiTunesでも聴けます!フォローすれば配信を聞き逃す心配もなし!これからはYoutubeの方にもポッドキャストを投稿していく予定ですので是非ご視聴・ご清聴よろしくお願いします!

第2回目:2019年世界選手権振り返り ~女子編:安藤選手の活躍、中国オリンピックチームの予想

タイのパタヤで行われた2019年世界選手権を観てきました!素晴らしい選手たちの試技を直接見ることができてとても興奮しました。

本当は今回で女子と男子の結果両方ともまとめて振り返る予定だったのですが….女子の話で意外と盛り上がってしまい収録が長引いてしまいました。(笑)

ということで今回は

女子編!!

になります。

今回のエピソードでは主に中国人女子チームに関して話しました。あと、日本人選手と韓国人選手の活躍も少し触れています。現地にいた僕でしか知りえない情報とかもたくさん話しているので是非聴いてみてください!近いうちに男子編も収録しておきます!少し風邪気味でしてかなり鼻声になっていたのですが、そこは大目に見てください。(笑)

女子64㎏表彰式。IWFより。

このポッドキャストが気に入りましたら是非シェアしてください!このポッドキャストはこのブログの他にSpotify、iTunes、YouTubeにても聴けます。これからどんどん日本にてウエイトリフティングを盛り上げていきたいと思います!

YouTubeにも投稿しました!→ https://www.youtube.com/watch?v=O_k18jVLH94&t=20s